シアターラヴ/可不
少女因子曲詳細
例年より桜の開花が早く、ぽかぽかとした陽気が凍り付いた心をも溶かすような春でした。君は自室の部屋の隅で独り、ドアにもたれかかるようにして硬くなっていました。乱雑に投げられた卒業アルバム。君の写真は黒く黒く塗り潰され、窓から差し込む光を反射させて鈍く輝いていました。 用意したプレゼントやお手紙、こっそり書いた卒アルの寄せ書き。二人で観に行く予定だった映画のチケット。 何度季節が巡ってもこの傷が癒やされることはありませんでした。 君がいない世界で、幕を下ろす事も叶わないまま。まるで私だけがずっとラストシーンを繰り返しているようでした。触れられなかった指先、言いかけた言葉。君が好きだった映画のエンドロールが今もまだ耳にこびりついて離れない。 君と出会った春。生温い風の中、二人で学校を抜け出して駆けたあの瞬間だけは何度思い返しても色鮮やかで、どんなに願っても消えてはくれません。二人で見上げたスクリーン。あの瞬間の君は光に照らされて、世界で一番綺麗に笑っていました。屹度それはこの世界で愛した唯一の光だったから。必死に掴もうとして、指の隙間から溢れてしまった願いだったから。 あの横顔を思い出す度に胸が軋むのです。君がどれだけこの世界を愛そうとして、どれだけ届かなかったのか。──今になってようやく理解できてしまうから。 私に唯一残されたのは記憶の再演に縋って、君に触れ続けること。諦めでもなく、希望でもない。終わりを抱えて歩き続けるという君が最期まで選べなかった生き方を、私は選ぼうと思います。 それが君を生かすたった一つの祈りで、 私を生かすための呪いなのですから。 vocal / 可不 others / 少女因子(https://x.com/es_es2223) inst (https://drive.google.com/drive/folders/1QV0FO0puiMZxyVePrqgcHTLuVpx0CtSH)





